夏目漱石の名作「こころ」を読んであらすじと感想<ナツイチ傑作撰>

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日本文学はあまり読まないゲーマーのリョウです。

先日、新宿をふらふらしていると紀伊国屋書店前をたまたま通りました。

あのお店は、外にワゴンが出ていて街行く人が本を見るため足を止めます。

そんな中、「ナツイチ」という夏のキャンペーンをやっていてイメージキャラクターを

「吉岡里帆」さんが行っていました。魅力的な映像も流れていて

「本を開けば夏開き」という言葉が頭に残りました。そんな中でひときわ目立つ位置にあってメインとして置いてあったのが

 

夏目漱石作「こころ」

でした。吉岡里帆さんの表紙が素敵ですね。

まさに本のジャケ買いではないですが、その表紙に誘われたのと

恥ずかしながら、おそらく夏目漱石作品で一番の名作ともいわれるこの日本文学代表作品をきちんと見たことがなかったので

「400円」というお求めやすいお値段ということもあり思わず買ってしました。

おそらく、本を好んで読まれる方はほとんどが呼んでいるであろうこの名作を、アラサーな男がきちんと最後まで読んで感じたこと、思ったことを書きたいと思います。

・読んでいない方は是非。名作です。

「こころ」夏目漱石作

 

「こころ」の簡単なあらすじ

書く必要もないくらいですが、一応書いておきます。なるべく話の核になるようなネタバレはしません。

主な登場人物

<私> この物語の主人公。物語の上、中は彼と先生、彼と両親という関係から<私>目線で描かれる。

<先生> 物語の下(本編の半分程度にあたる)はこの<先生>からの手紙からなる。<私>がそう呼んでいるだけだが、知識が豊富で憧れの対象でもある。どこか人を寄せ付けないような節がある。

<先生の妻> 先生の妻で一緒に住んでいる妻。

<先生の友人K> 先生の手紙で登場する、小さいころからの親友。

ストーリー(なるべくネタバレなし)

上、中は主人公視点

下は先生の手紙のみ。

でお話は終わります。

 

・私は夏休み、友人に誘われ鎌倉へ旅行することになるが、友人は家の都合で帰ってしまう。

・一人鎌倉に残された私は海で不思議な雰囲気の大人に出会う。

・どこか、その人が気になった私はひょんなことからその人と仲良くなることに。

・私は勝手にその人を「先生」と呼び、東京に戻ってもときどき来ることを約束する。

・何度か訪問するも先生は留守に。3度目に先生の奥さんからお墓参りに行っていることを聞きそこに行くことに。

・先生は驚きながらも、私を家に招きやがて、先生の奥さんとも仲良くなる。

。頻繁に先生の家に遊びにいくも、どうやら先生は本当の意味で心を開いてくれていない。どれどころか人間そのものに対しての嫌悪感のようなものを抱いている。

・どうやら奥さんもそう感じる時があるらしいが、そうなってしまった原因がわからないという。

・そんな中、私の父親が重い病気になってしまったとのことで帰郷することに。

・帰郷する少し前に、先生は「あなたは真面目ですか?」と聞き、なぜ自分が妻や人を真に愛せないかの話しを<私>にすることで一人には真実を話しておきたいと言った。

・帰郷し、父親の死の覚悟を知った私。徐々に弱っていく最中、明治天皇の危篤を知るとこに。

・それと同時くらいに、先生から「会えないか?」と電報が届く。

・状況が状況なので会えない返事と手紙を添えた。そうすると「来なくてよろしい」との返事が。

・明治天皇の訃報を受け、さらには父の危篤状態のときに先生から一通の非常に分厚い手紙が届く。

・その中の最後の文を読むと、私は思わず先生に会いたいがため東京に戻る汽車に飛び乗る。

・先生の手紙の内容は、先生の過去、先生と奥さんのこと、さらには先生の親友であるKのことが記されていた。

 

呼んだ感想や印象的な言葉

※内容のネタバレが若干含まれます。

まず、こうした文学作品を読むこと自体があまりないためか、最初の印象は言葉や言い回しが少しわかりづらい。ということでした。

ただ、そこまで現代の表現とかけ離れているわけではなく、また本の最後には単語の語注が記載されているので、まったくわからないということはなく、

むしろ読むにつれて慣れてもきますし、その書きまわしがむしろ心地よくなってくるといったら変かもしれませんが馴染んできます。

 

・私について

この私ですが、終始先生を言わば崇拝しているようにも見え、そして同姓でもある先生に対して寂しさを感じたり会いたいと思ったりと「好き」に近いような感情が見え隠れしました。

なぜそこまで、先生を知ろうとしたのか。それは先生の博識で常識人な表向きな部分も去ることながら、そんな先生にも関わらず「人嫌い」になってなかばニートのようにふらふらした生活を送っている、そんな大人は私の周りにはいなくて(実際、その対照の存在として父親が挙げられていたり)それがどんな過去を持ってこうなっているのか、また私自身も大学を出て何者になろうかとも決めかねていてその答えのようなものを先生に求めていたのかなと勝手に思います。

本文中にも、先生の過去という核に迫る際に

「先生の過去が生み出した思想だから重きを置くのです。二つのものを切り離したら、私にはほとんど価値のないものになります。私は魂の吹き込まれていない人形を与えられてだけで満足できないのです。」

とあるように、それだけ先生の言葉一つ一つに過去という裏付けを欲しそれを己の人生の教訓として生かしていこうとしたのかなと思います。

・先生について

優秀であるにも関わらず、社会と距離を置き、互いに愛し合った妻もいながらどこか闇を抱えていて、何物を受け付けようとはしない。言葉では何といっても奥さんに対してもどうやら心を開いていない様子。そして時折、口にする「もし自分が死んでしまったら」という言葉。

呼んでいるうちに、なぜなのか?ということがすごく気になってきてどんどん引き込まれました。この物語の最重要人物ですね。

本文中、私に対して自分の経験から警告する際に

「平生はみな善人なんです。少なくてもみんな普通の人間なんです。それが、いざというときに急に悪人に移るんだから恐ろしいのです。だから油断ができないんです。」

と言います。これはこの物語のかなり核になる部分だと思っています。先生の手紙から明らかになる過去から、

両親が死んでしまったことによって、信頼し憧れすらも抱いていた叔父が自分をだましてお金をせしめていた。

このことから、簡単に人を信用してはならないと心に刻まれます。そんな先生をある意味救ったのが、その後下宿した未亡人である奥さんとその娘のお譲さんでした。

先生は徐々にそのお嬢さんに惹かれます(おそらく女性というものに対して免疫がなかったのと女という先入観を解いてくれたから)

そうして、救われたはずの先生は、同じように親友のKを救いたいという気持ちで同じように下宿させ、コミュニケーションを取らせます。

友人のKは異常なほどの勉強家でかつ野心的なので、自分が大成すること以外の無関係なものを邪悪であるときめつけています。

果たして、先生は心からKを救いたかったのかそれとも、自分が思うようにKの考えが変わるさまをどこかで楽しんでいたのか定かではありませんが、

いずれにせよ、Kは先生の思惑通りにその邪悪であるはずのものに動かされていきます。想定外だったのが、K自身もお嬢さんに惹かれてしまったということ。

それを阻止するため。誰のためでもなく自分自身の利益のために、かつてK自身が言った言葉を使ってこう言います。

「精神的に向上のないものは馬鹿だ」

先生自身も、その「悪人」となってしまったのですね。

その後、焦った先生は早く型を付けるため、お嬢さんをもらう約束を奥さんとします。それを知ったKは数日後自殺してしまいますが、

この死に対しても色々な見方ができ、そのあたりも本当によくできていると思いました。

見方にもよりますが、お嬢さんを取られてしまったという事実よりも自分自身が信じて生きてきたことがぶれてしまったあげく、それを先生に指摘されたことでその「覚悟」の形として死を選んだのかと思いました。

なんにせよ、先生のせいで死んでしまったことには変わりませんが。その後、本来愛し合った妻との生活が待っていたにも関わらず以下の言葉を残しています。

「私は世の中で女というものをたった一人しか知らない。-中略- 私たちは最も幸福に生まれた人間の一対であるべきはずなんです。」

としながら、

「恋は罪悪ですよ」

と断言しています。先生の手紙や、私と先生の妻との会話(Kのこともあくまで先生の親友として亡くなった人がいた程度にしか覚えていなかった)においても、先生と先生の妻は間違いなく両想いでかつそれまで他の人を知らない純粋な愛であると思いました。

がしかし、それをKの自殺という事件で、妻そのものがKとの出来事を常に思い出される鎖となってしまったのでしょうね。

最終的には、

「世間はどうあろうともこの己は立派な人間だという信念がどこかにあったのです。それが K のために美事(みごと)に破壊されてしまって、自分もあの叔父と同じ人間だと意識した時、私は急にふらふらしました。他に愛想を尽かした私は、自分にも愛想を尽かして動けなくなったのです。」

とし、自らの命も絶ってしまうのでした。本では直接的な死んだという描写はないものの、上における私の語り口から先生が亡くなったことは明らかかと思いました。

 

まとめ

先生の過去、印象的な言葉。

人間の「こころ」というテーマを描き切った真の名作だと思いました。

なかなか、本を読まない私ですが、思わず一気見してしまうくらいその世界観に引き込まれ、

また先生とKとのやりとり。対比したKという一人の人間の生き方。その人生を奪ってしまった先生の言葉。先生自身もその行いで命を絶つということ。

読者にとってこうして考えさせられるような作品って偉大ですね。やっぱり昔の名作ももっと呼んだほうがいいと思った今日この頃でした。

 

ゲーマーのリョウ

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