(当記事は2023年4月12日に作成しました。)
あなたは自分の物語を歩んでいますか?
私がファイナルファンタジー10を初めてプレイしたのは、ちょうど中学1年の夏でした。
当時、父から譲り受けたプレイステーションでFFシリーズをプレイしていた私は、FF10の発売を心待ちにしていました。そして、それが最高の夏の物語の始まりでもありました。
スピラの世界に入り込み、完全にティーダ(名前を変えれたので私の物語ではリョウ)となってユウナに恋して、シーモアにNTRれの気持ちを学び、儚い最後を体験した少年はその世界に魅了されました。
感動の体験から20数年、FF10が現代に歌舞伎としてよみがえるというではありませんか。
いろいろ調べてみると、前編・後編、休憩を含めて約9時間。そして、チケット代も約2~3万円と、普通の大人にはなかなか手が出しづらいもので、直前まで迷っていました。
歌舞伎のキャラビジュアル、公開動画などを見ても、果たしてこれはFF10の物語として楽しめるのかと不安でした。
少年の頃のなんでも吸収してしまうスポンジみたいに多感な時期に体験した未知の世界。
コマ投げを使ってハメることでしか愉悦を感じない大人になってしまった自分にとってFF10歌舞伎は感動できるものなのか?
まして歌舞伎観劇は初めてでお作法などわからない。そんなちょっぴりの期待感と大きな不安感を持ちつつも
「大人みたいにかっこつけて、後悔するなんて絶対いやだ!」
の気持ちで古くからの友人と大のFF好きの友人とで観覧してきました。
結論、、
新豊洲にスピラは存在しました。FF10の世界に浸れる幸せなひとときでした。
今回は、そんなFF10歌舞伎の素晴らしいポイントや名シーンをレポートとしてお届けしたいと思います。
講演自体は23年4月12日に千秋楽を迎えています。ですが、
23年10月までの期間限定で配信もされるようなので、見逃した方や再度スピラに戻りたい方はぜいどうぞ。
U-NEXTにて配信されるようです↓
※FF10のストーリーについてネタバレしていきますので未見の方はご注意ください。
FFⅩ歌舞伎のここがスゴイ!
FF10をリアルタイムで遊んだアラサー男性の視点から、印象的なポイントをまとめていきます。
公演は5幕に分かれおり、12~21時までの長丁場でしたがそれはもうあっという間の体験でした。
観劇から3日経った今でも、ここがサイタマなのかスピラなのかわからない状態でいます。
現実に戻るためにも素晴らしかったポイントを言語化してまとめていきたい次第です。
それじゃあ、あたし、書いちゃうよー!
映像×役者 で名シーンの実写再現 = 超感動
FF10といえば儚く悲しいストーリー。多くの名シーンがあるのも特徴です。
個人的に思い入れのある名シーンのほとんどが、大きな舞台で見事に再現されていました。
開幕の『ザナルカンドにて』のBGMが流れ、お決まりの
「最後かもしれないだろ?」
これだけで、少年リョウの感受性豊かなスポンジは戻ってきました。
そこから展開されるFF10の物語に涙腺ゆっるゆるになったスポンジおじさんの水分はもっていかれます。
「これはFF10だ!俺の知っているスピラの世界はあったんだ!!」
第1幕では、ティーダがスピラにやって来てユウナ一行と出会い、キーリカ島での異界送りのシーンで幕を閉じますが、すでに完全に引き込まれ、「3万円の元を取った!」と感じられました。
ちゃんとこのシーンあるんだ、このキャラ出てくるんだ。というシーンもありファンとしてうれしくなります。
各シーンについては後述するのですが、どのシーンも制作側の強い思い入れを感じられ、FF10の世界観を残しつつうまく実写化されていてほんと感動しました。
和風BGM×歌舞伎風アレンジ = 超シナジー
FF10はBGMも素晴らしいものばかりなのですが、原作の場面にあったBGM選曲はもちろんのこと、歌舞伎風に和のテイストでアレンジがされています。
Otherworldや素敵だね。など和風アレンジな曲調はびっくりするくらいその世界観とマッチしていました。
音楽は過去の記憶を鮮明に思い出させる力があります。頭の片隅に存在していたあの音楽を聴くだけで、よりその世界に引き込まれます。
また、要所で歌舞伎を取り入れた場面も雰囲気を壊さないよう取り入れられていました。
歌舞伎に詳しくない私でも、登場シーンのキャラクター紹介、音や三味線を使った演出、バトルシーンのやり取りなど、歌舞伎の要素が盛り込まれていて、日本の伝統舞踊のエッセンスを感じることができました。
ゲームをきっかけにして文化に触れる人が増えるという意味でも、菊之助さんの発案は非常に意義深いものだと感じました。
キャラの衣装アレンジ×動作、セリフの再現度 = 超没入感
キャラの再現度がまあすごいんですよ。立ち絵だけの画像をみるとそりゃあゲームをやってた人から言わせると
「こんなのFF10じゃない!笑い取りにきてるのかこの野郎!」
って思うかもしれません。私もこれ大丈夫かなってほんと不安でした。
しかし!百聞は一見に如かず。実際に劇場で見るキャラクターたちはまさにあのキャラ達そのもの。
歌舞伎という性質上、女性キャラも実際は男性が演じているので、100%完全再現は難しいです。
ただ、あの時あの場所にいると不思議とそう見えてくるんです。
特にユウナ演じる中村米吉さん。いで立ち、しゃべり方までまるでユウナで、男性なのに惹かれてしまうような変な感情になりました。
「ユウナかっわい。いやでも中はおとこ、、いやでも綺麗、好き」みたいな。
衣装のほうは歌舞伎要素として、和が強くなっていたり、ティーダにまげがあったりするわけですがそれはそれで味があります。
練習の結晶というのもあると思いますが、みなさん声質もそっくりで、でもものまねというわけでなくャラクターに憑依しているようで、役者さんは本当にすごいと思いました。
そういったキャラへの作りこみも含めて世界に没入できました。
動くステージと大画面×生演技の迫力 = 超一体感
会場であるIHIステージアラウンド東京は座席そのものが360℃回転して動きます。
そして、超大型のスクリーンも場面に合わせて回転し、その奥からステージが出現する仕組みになっていました。
なので、ちょっとしたアトラクション気分が味わえて、場面場面で目まぐるしく変化していくので休む暇なく物語が進んでいきます。
前方に写し出される大型モニターには背景や召喚獣などで使われさらに再現性が高くなっています。
このモニターを使えば原作に寄せるという意味では色々できたかと思いますが、あくまで実写の舞台として勝負したいという想いを感じました。
映像は状況を補完するためのツールとして使って、人である役者でこの舞台を成立させようという試みは賞賛ものです。
個人的にはコロナ明け初の演劇を観たのですが、やはり生の迫力や空気感はけっしてYouTubeでは体感できないと思えました。
しかも、このIHIステージアラウンド東京自体が年内で閉園するとのことでまさに今しか見ることのできない「最後かもしれない」公演でした。
改めて、自分の体で目で耳で感じるこのリアルの空気をFF10の世界で感じることができて幸せでした。会場もそういった感動の気持ちで一体となっていた気がします。
FFⅩ歌舞伎 名シーンについての解説
ここからはFF10歌舞伎で特に素晴らしかった名シーンについて解説します。
※こちらは歌舞伎の内容についての詳細なネタバレなっているためご注意ください。
①異界送り
第一幕のクライマックスシーン。YouTubeの公式でもアップされています。序盤の一番の見せ場です。
半端ないもの見ちゃった…!に尽きます。
幻想的な雰囲気がステージ上で光やミストを用いて見事に再現されていました。これに関しては完全に原作を超えて昇華した。といっても過言にないくらい凄いものでした。
ユウナが浮く演出も、クレーンを使って表現しながら、幻光虫のような幻想感も演出されていました。これはまさに圧巻のシーンで、観客を魅了すること間違いなしでした。
こうした演出の数々は、「半端ないものを見た」と抱かせるほど、観劇者に強烈な印象を与えました。ステージ上で繰り広げられる幻想的な世界観は、FF10ファンだけでなく、新たな観客にも感動を与えることでしょう。
②シーモアバトル
原作ではストーカー気質で粘着男のシーモアさんですが、歌舞伎ではメインヴィランとしておいしいところを持っていきます。
演じるのは俳優としても人気の尾上松也さん。いやー雰囲気ありますね。独特の悪いにやり顔がいい味出してました。
前編3幕目のクライマックスでは、シーモアとのバトルが行われますが、ここでは歌舞伎の舞踊が多く取り入れられたオリジナル展開になっており、迫力満点です。
歌舞伎版のシーモアでは、彼の父親や母親との過去のシーンが多く取り入れられており、なぜシーモアが世界を憎むようになったかの構図がより分かりやすく描かれています。
特に、中村獅童さん演じるアーロンとシーモアの立ち合いはすごかったですねえ。
こちらも公式チャンネルで公開されてます。でも生のがやっぱアツいです。
③マカラーニャの森 世界一ピュアなキス
説明不要の名シーン。CMのキャッチコピーとして有名な『世界一ピュアなキス』のあのシーンです。
ここにいきつくまでの展開がもう神なんですよね。
ユウナに惹かれていくティーダ。ユウナは自分の気持ちに気づきつつも使命のため素直には向き合えない。
ティーダはユウナを元気づけるため色々な話をしていたけど、実はユウナは旅を終えるころには..。
そしてその事実を知ってしまったティーダは?
っていう展開からのこのシーンですから。
歌舞伎でもめちゃくちゃいい演出してましたねえ。舞台上を湖のように見立てて、さらにはミスト上にプロジェクションマッピングで二人を映す神演出。
ティーダの「逃げちゃおう。」からユウナ一瞬ノリノリからの「できないんだよ..」
そして『素敵だね』のイントロ。書いてるだけで泣けてきます。
オリジナル音源ではないですが、歌付きです。
「これで泣かないやつがいるかよバカヤロー!!」
原作未プレイ時点だとユウナが死んでしまう旅をしている悲しさで見る一方で
原作クリア後だとティーダが消えてしまうことに対する悲しさに移り変わります。
いやあ、すげえ作品だ。歌舞伎でもほんと感動シーンで、観客のしくしくが伝わりました。
④ジェクトバトル
「手加減とかできねえからよ。」
「すぐ終わらせてやるからな!さっさとやられろよ!」
歌舞伎版では、ティーダとジェクトの親子の物語のクライマックスがオリジナル展開で描かれています。
原作では究極召喚ジェクトに幾度も苦渋を飲まされましたが、ここでがティーダとノーマルジェクトの一騎打ちという演出になっています。
歌舞伎ならでは立ち合いと思いきや、幼少時代のティーダが現れるシーンでジェクトが動揺するという演出が取り入れられて
ティーダとジェクトの複雑な親子関係に焦点を当てた演出で非常に感動ものでした。
「泣くぞ、すぐ泣くぞ、絶対泣くぞ、ほら泣くぞ」
「だいっ嫌いだ!」
はほんとやばいです。やばいしか言ってない語彙力低めの記事ですいません。
ちなみにジェクト役の役者さんが本当にジェクトのまんまでした。
⑤召喚獣バトル
こちらも完全オリジナルの展開で、クライマックスを演出しています。
原作ではエボンジュ対策のため泣く泣く一緒に旅してきた召喚獣たちを片っ端から倒す展開となります。
ジェクト戦と比べるとやや消化試合感のあるこのラストバトルですが、歌舞伎によってそれは生まれ変わりました。
召喚獣すべて(アニマとメーガス3姉妹以外)が変異体となって表れるのですが、歌舞伎ならではの「連獅子」となって出てきます。
連獅子は歌舞伎の象徴的な「毛振り」を見せる演出で、原作ファンには予想外のアレンジとして驚きを与えます。
召喚獣をこういった形で登場させるとは思ってなかったのでとてもいいアレンジだと思いました。
細かな演出として、雷属性のイクシオンに雷嫌いのリュックがおびえていたり(一緒にいった友人に教えてもらった。さすがFFマニア)用心棒の着物にダイゴロウの刺繍が施されていたり、ファンサービスが随所に見られます。
こうした展開を経て、感動的なエンディングへと続きます。アーロンの成仏、ティーダとの別れ、ユウナとの約束の口笛、そして演説といった名シーンが丁寧に再現されてます。
非常に素晴らしい終わり方だったと思います。
FF10歌舞伎まとめ
この他にもアルベドホームやユウナレスカ決戦(ここも再現度すごくてよかった)、「キマリは通さない」など数々の名シーンが再現されていました。
この歌舞伎に携わった方々の大きなFF10愛を感じることができ、少年時代に感じたあの時の気持ちや感動を味わせてもらったことにとても感謝です。
公演自体はちょうどこの記事を書いた日で千秋楽ですが、いつかリバイバル上映した際にはまたスピラの世界に酔いしれにいきたいと思います。
FF10ファンなら絶対に感動できる内容になっているので、配信や再上演の際にはぜひともその目で味わってみてください。涙腺ゆるゆるになること必須です。
私自身も自分の物語を動かして歩んでいこうと思います。
さわかぜ
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